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【秋岡 八雲√】
恥ずかしかったのか、凛は尻尾を揺らしながら教室を飛び出していった。
あの黒猫を追いかけ捕まえて、羞恥を煽り身動きのとれなくなった凛を眺めたい衝動にかられるけど、
教職という立場を、今は忘れるわけにはいかない。
「あ~あ。凛ちゃん逃げちゃった。ちょっと僕探してきますね」
「あぁ。猫だからうまく逃げるかもしれないけどな」
素直に感情を出せる、学生という立場がとても羨ましい。
教室のドアから、急いで出ていく雨宮の背中を見送った。
「橘は、黒猫追いかけなくていいのか?」
「こんな恰好で、外をうろつける度胸は俺にはないですよ」
軽く肩を上げ、苦笑する橘に「そうだな」と俺も苦笑を返した。
そして、橘は雨宮につけられた、しっぽと耳をとり帰宅準備を進めていた。
「秋岡先生は、まだ教室にいますか?」
「そうだな。雨宮にペイントされたし、もう少し生徒が帰るまで教室に身を隠しているよ」
「確かにそれじゃ、目立ちますからね。じゃ、俺は帰ります」
俺が、自分の顔を指さすと橘は納得したように俺を残して帰っていった。
「気を付けて、帰るんだぞ」
俺が教室に残るのは、目立つという理由以外にも、さっき教室から逃げた黒猫が日直日誌を持って逃げたからというのもある。
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橘が帰って暫くたった頃、教室のドアがそろりと開けられた。
どうやら、黒猫が迷い込んできたらしい。
俺は、その黒猫を手なずけようと、ポケットに忍ばせていた飴を手にとった。
「何、お菓子が欲しい?それとも、俺に悪戯がしたい?」
「あっ、あっくん!」
俺が、教室に残っていると思わなかったのか、驚いた顔で凛はこちらをみていた。
「何度言っても分からないね、凛は。学校では・・・・」
「秋岡先生だろ」
「秋岡先生だって・・・今、凛って・・・・っ」
凛の言葉を遮るように、飴玉をナイロンをはがし、凛の口へと放り込むと、もごもごと何か言いたそうに口を動かし、俺から視線を逸らした。
「それにしても、なんで、そんな可愛い恰好してるんだ?」
「こ・・・これは・・・・」
俺の前で、恥ずかしそうに尻尾を垂らしている姿は、本当の猫みたいだ。
「まぁ、可愛くていいけど・・・・これどうなってるんだ?」
尻尾がどうやって、くっ付いているか気になり、凛の背後に回り尻尾を持ち上げると、小さな悲鳴と共に凛は尻尾を俺の手から取り上げた。
「あっ!あっくんのエ/ッチ!!」
「はぁ!!?」
そんな罵声を浴びせられるような、ことをしたわけではない。
俺が、凛のお尻を撫でまわした、とかなら分かるが・・・
教職員と生徒の恋と言う時点で、社会的に問題がある。
もし何かあった時、俺はいいとしても、凛に迷惑が掛からない様に、
彼女と誠実に向き合い、色々我慢しているつもりだが・・・・・。
どうやら、その全て凛には伝わっていないらしい。
凛の目の前にたち、彼女を見おろすと、虎に睨まれた猫のように身をすくめ視線を逸らした。
「さっきからなんで、俺の方を見ないの?」
「だって・・・・」
「だって?」
きっと、普段見慣れない仮装のせいで俺を直視できないと薄々感じているけど、子供じみていると思うが
ジリジリと凛を追い詰めていく、この感じが堪らなく好きだ。
「・・・・・あっくんが・・・そんな恰好してるから・・・目のやり場に・・・困る・・・・」
微かに弱まっていく語尾に、思わず笑みが漏れる。
それを言うなら、俺も同じなのに・・・・。
栗色の髪から、真っ黒の耳がピンと立ち、凛が動くたびに左右に揺れる尻尾。
揺れる尻尾が恥ずかしいのか、視線を落とし恥じらう姿が追い詰めたい衝動にかられる。
「そうだ、ハロウィンだからね。俺からも、Trick or Treat。
俺は、飴をあげたけど・・・・・凛はどっちがいい?」
「私・・・お菓子持ってないよ」
困ったように、ポケットに手をいれお菓子を探す凛の唇に、俺は人差し指をあてた。
「あるだろ。飴玉・・・・この中に」
俺が巻く包帯と同じ色に染まっていく凛を、俺は楽しそうに眺め顔を近づけた・・・・・
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【眠れるキミと王子様!?】
~ハロウィンをキミと!?~包帯男√~END
【KOIOTO】
イラスト : イツキ
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