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【雨宮 渉√】
ネコ耳としっぽをつけた 彼女が僕をおいて教室をでていった。
恥ずかしかったと言うのは、容易に想像ができるけど・・・・
(意地悪しすぎちゃったかな?)
みんなの仮装が終わった時、凛ちゃんから僕のスマホにメールが入った。
【どこにいるの?】
という短いメール。
僕に逢いたいっと思ってくれてるのが嬉しくて、少し意地悪心が疼いてしまった。
【凛ちゃんの教室で、一人で待ってる】
飛んできてくれた凛ちゃんが、どんな顔をするだろうっと思ってたけど、僕の予想をはるかに超えた登場をしてくれた。
(あんなに可愛い登場と仮装をしてると知ったら、他の奴になんてみせなかったのに)
「ちょっと、用事思い出したから失礼します。その服、よかったら着て帰ってください。明日返してくれたらいいですから。では、Happy Hallowe'en」
「え?ちょっと雨宮!!」
戸惑う二人を残して、僕は凛ちゃんを探して教室をあとにした。
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「凛ちゃん。み~つけた」
屋上の片隅で、校庭を眺めている凛ちゃんに背後から近づく。
少し拗ねているのか、僕の声に振りむいてはくれなかった。
「ごめんね。凛ちゃん」
凛ちゃんの横に立ち、彼女の顔を覗き込むと、少し潤んだ瞳と視線が重なった。
「もう・・・一人で待ってるって言ったのに」
「うん。まさか、凛ちゃんがこんなに可愛い恰好してるって知らなかったから・・・
知ってたら、誰にもみせなかったよ」
シュンと肩を落としてみせると、今度は凛ちゃんの方が僕を心配そうに覗きこんできた。
「渉君・・・・」
(まったく、優しいんだから、他の男子にも騙されないか心配になるよ)
「許してくれる?」
「うん。怒ってないよ。少し恥ずかしかっただけだから」
確かに可愛いらしい猫ポーズを、同級生と担任にみられたのだから、恥ずかしかったと思う。
「ねぇ、もう一回言って♪」
「何を?」
不思議そうに首を傾ける凛ちゃんに可愛くおねだりをしてみる。
「教室に入る時に、言ってたでしょ。今日ハロウィンだから、僕だけの為に言って」
「え!!?」
驚いた素振りを見せたけど、”僕だけの為に”という文句が効いたのか少し恥ずかしそうにしながら、下を向いてしまった
「もちろん、ポーズもつけてね?」
そう言う僕に、真っ赤な顔をした凛ちゃんは「もう!」と頬を膨らませて僕の胸を叩いた。
お菓子を持っていないから、悪戯を頂戴と言ってキスをする計画をたててみたけど・・・上手くいきそうにない。
せっかくヴァンパイアの恰好をしているんだし・・・なりきってみるのも悪くないかもしれない。
僕は、凛ちゃんを隠すようにマントを広げた・・・
「キミから・・・とてもいい匂いがする」
マントが、凛ちゃんを闇の世界へと誘う(いざなう)・・・・。
「渉・・・・君?」
「酷く喉が渇くんだ・・・・焼ける様なこの喉の渇きを潤してくれるのは・・・キミの血だけ・・・・」
僕は、闇を滑る様に凛ちゃんの首筋に顔を埋め、牙を彼女の白い首筋へとそえると
白い肌は、ほんのりと桜色に染まっていく。
「だから・・・・凛ちゃん、キミを頂戴」
彼女の耳元で大きく口を開ける。
ギュッと目を閉じる彼女の気配を感じて、首筋に牙をたてる代わりに、チュッと甘やかなリップ音をたてた。
「あっ・・・渉君!がっ・・・学校だよ!!!」
凛ちゃんが、抵抗にもならないほど柔らかな力で、僕の胸を押し真っ赤な顔で眉を下げている。
(こんな顔を、彼女にみせられて我慢できる彼氏って世の中にいるのかな・・・・)
「知ってるよ」
そう言って僕は、唇に触れるだけのキスをした。
「あ!!渉君!!!!」
「マントに隠れてたから、下からも見えないよ」
「そう言う問題じゃ!!!」
笑いながら、凛ちゃんの体から離れ手を差し出す。
「今日は、このまま帰ろうか。可愛い黒猫を連れて歩いてるヴァンパイアってよくない?」
「恥ずかしいから、はずして帰るからね!!!」
「え~可愛いよ」
そう言って凛ちゃんは、僕の手を握ってくれる。
いつか、可愛い彼氏から・・・・カッコイイ彼氏に昇格できたら嬉しいけど・・・・
「・・・・渉君は、・・・・カッコイイからそのままでもいいけど」
「え?凛ちゃん今なんて言った?」
「も・・・もう言わない!!」
カッコイイ彼氏に昇格できるのは、そう遠くない未来かもしれない。
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【眠れるキミと王子様!?】
~ハロウィンをキミと!?~吸血鬼√ END
【KOIOTO】
イラスト :カヲリ
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