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【雨宮 渉√】

 

ネコ耳としっぽをつけた 彼女が僕をおいて教室をでていった。

 

恥ずかしかったと言うのは、容易に想像ができるけど・・・・

 

(意地悪しすぎちゃったかな?)


 

みんなの仮装が終わった時、凛ちゃんから僕のスマホにメールが入った。

 

【どこにいるの?】

 

という短いメール。

僕に逢いたいっと思ってくれてるのが嬉しくて、少し意地悪心が疼いてしまった。


 

【凛ちゃんの教室で、一人で待ってる】

 

飛んできてくれた凛ちゃんが、どんな顔をするだろうっと思ってたけど、僕の予想をはるかに超えた登場をしてくれた。


 

(あんなに可愛い登場と仮装をしてると知ったら、他の奴になんてみせなかったのに)


 

「ちょっと、用事思い出したから失礼します。その服、よかったら着て帰ってください。明日返してくれたらいいですから。では、Happy Hallowe'en」

 

「え?ちょっと雨宮!!」


戸惑う二人を残して、僕は凛ちゃんを探して教室をあとにした。

 

 

**

 

「凛ちゃん。み~つけた」

 

屋上の片隅で、校庭を眺めている凛ちゃんに背後から近づく。

 

少し拗ねているのか、僕の声に振りむいてはくれなかった。

 

「ごめんね。凛ちゃん」

 

凛ちゃんの横に立ち、彼女の顔を覗き込むと、少し潤んだ瞳と視線が重なった。

 

「もう・・・一人で待ってるって言ったのに」

 

「うん。まさか、凛ちゃんがこんなに可愛い恰好してるって知らなかったから・・・

知ってたら、誰にもみせなかったよ」

 

シュンと肩を落としてみせると、今度は凛ちゃんの方が僕を心配そうに覗きこんできた。

 

「渉君・・・・」

 

(まったく、優しいんだから、他の男子にも騙されないか心配になるよ)

 

「許してくれる?」

 

「うん。怒ってないよ。少し恥ずかしかっただけだから」

 

確かに可愛いらしい猫ポーズを、同級生と担任にみられたのだから、恥ずかしかったと思う。

 

「ねぇ、もう一回言って♪」

 

「何を?」

 

不思議そうに首を傾ける凛ちゃんに可愛くおねだりをしてみる。

 

「教室に入る時に、言ってたでしょ。今日ハロウィンだから、僕だけの為に言って」

 

「え!!?」

 

驚いた素振りを見せたけど、”僕だけの為に”という文句が効いたのか少し恥ずかしそうにしながら、下を向いてしまった

 

「もちろん、ポーズもつけてね?」

 

そう言う僕に、真っ赤な顔をした凛ちゃんは「もう!」と頬を膨らませて僕の胸を叩いた。

お菓子を持っていないから、悪戯を頂戴と言ってキスをする計画をたててみたけど・・・上手くいきそうにない。


せっかくヴァンパイアの恰好をしているんだし・・・なりきってみるのも悪くないかもしれない。

僕は、凛ちゃんを隠すようにマントを広げた・・・

 

「キミから・・・とてもいい匂いがする」

 


 

マントが、凛ちゃんを闇の世界へと誘う(いざなう)・・・・。

 

「渉・・・・君?」

 

「酷く喉が渇くんだ・・・・焼ける様なこの喉の渇きを潤してくれるのは・・・キミの血だけ・・・・」


 

僕は、闇を滑る様に凛ちゃんの首筋に顔を埋め、牙を彼女の白い首筋へとそえると

白い肌は、ほんのりと桜色に染まっていく。


 

「だから・・・・凛ちゃん、キミを頂戴」

 

彼女の耳元で大きく口を開ける。

ギュッと目を閉じる彼女の気配を感じて、首筋に牙をたてる代わりに、チュッと甘やかなリップ音をたてた。

 

「あっ・・・渉君!がっ・・・学校だよ!!!」

 

凛ちゃんが、抵抗にもならないほど柔らかな力で、僕の胸を押し真っ赤な顔で眉を下げている。

 

(こんな顔を、彼女にみせられて我慢できる彼氏って世の中にいるのかな・・・・)

 

「知ってるよ」

 

そう言って僕は、唇に触れるだけのキスをした。

 

「あ!!渉君!!!!」

 

「マントに隠れてたから、下からも見えないよ」

 

「そう言う問題じゃ!!!」

 

笑いながら、凛ちゃんの体から離れ手を差し出す。

 

「今日は、このまま帰ろうか。可愛い黒猫を連れて歩いてるヴァンパイアってよくない?」

 

「恥ずかしいから、はずして帰るからね!!!」

 

「え~可愛いよ」

 

そう言って凛ちゃんは、僕の手を握ってくれる。


 

いつか、可愛い彼氏から・・・・カッコイイ彼氏に昇格できたら嬉しいけど・・・・


 

「・・・・渉君は、・・・・カッコイイからそのままでもいいけど」

 

「え?凛ちゃん今なんて言った?」

 

「も・・・もう言わない!!」

 

カッコイイ彼氏に昇格できるのは、そう遠くない未来かもしれない。


 

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【眠れるキミと王子様!?】

 

~ハロウィンをキミと!?~吸血鬼√ END

 

【KOIOTO】

イラスト :カヲリ

 

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